奈良古寺【不退寺】
不退寺の歴史
About History
不退寺(真言律宗)は山号を「金龍山」といい、正式名称は「不退轉法輪寺(ふたいてんぽうりんじ)」です。

不退寺はどんな歴史を経たのか、簡単に見ていきましょう!

平城(へいぜい)天皇が隠棲場所として大同4年(809年)に創建した「萱(かや)の御所」が始まり。その後、平城天皇の皇子・阿保(あぼ)親王や、阿保親王の五男・在原業平が萱の御所に暮らしていたと言われています。
承和12年(845年)、仁明(にんみょう)天皇の勅願により、在原業平が萱の御所を寺に改め、「不退轉法輪寺」を建立。父・阿保親王の菩提を弔いました。
平安時代末期には平重衡による南都焼討のため諸堂が炎上してしまいましたが、鎌倉時代に西大寺の叡尊(えいそん)上人により再興されました。
その後、南都十五大寺の一つとして栄え、慶長7年(1602)には寺領五十石を得て境内の整備がなされましたが、江戸時代中期以降は衰退し、現在に至っています。
不退寺の見どころ
Highlights
不退寺の見どころを次の2つに厳選しました。

では、それぞれ詳しく見ていきますね!
業平自刻(?)の傑作!
『聖観音菩薩立像』
不退寺でぜひ見ていただきたいのが、本堂内に安置されている御本尊『聖観音菩薩立像』。

こちらの『聖観音菩薩立像』は、在原業平自ら彫ったものと伝わっています。
色白でお優しい表情をしておられますが、やや肉感的なお体で、高さが191cmもあるので結構存在感があります。
そして何より特徴的なのが、両耳の上にリボンのようなものを付けていらっしゃるという、かわいらしい仏像です。

一説によると、業平の理想の女性を刻んだとか笑
『聖観音菩薩立像』をよく見ると、若干腰を右側にクイっとされています。
こういった腰をひねった形は薬師寺『薬師如来』の脇侍『日光・月光菩薩』などでも見られますので、こちらも元々は脇侍だったのではないかと考えられているそうです。
脇侍だったものがどういう過程を経て御本尊に格上げされたのかは残念ながら不明ですが、このかわいらしさであればセンターを取っても異論なし!

『聖観音菩薩立像』は写真撮影不可のため、ぜひ現地でご覧ください
ちなみにこちらの『聖観音菩薩立像』の周りには『五大明王像』がいらっしゃいます。
皆さん結構怖いお顔をされているので、『聖観音菩薩立像』のかわいらしいがより際立って見えますよ笑

五体揃った五大明王像は奈良では珍しいそうですので、こちらも必見です!
もはや必然!
不退寺「紅葉」
不退寺といえば紅葉の寺として有名で、秋になると多くの人で賑わいます。
すでに参道にちらほら紅葉があり、良いイントロを奏でています笑

拝観入口の南大門をくぐったらまず右側を見ましょう。池と多宝塔、そして紅葉がお見事です。

境内があちこち紅く染まっています。

ちなみに、多宝塔の奥には在原業平が詠んだ超有名な和歌、「ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くゝるとは」の歌碑があります。

実はこの和歌は、紅葉した落ち葉で竜田川の水面が真っ赤になった状況を詠んだ歌で、業平ゆかりの不退寺に紅葉があるのはもはや必然と言うわけです。
不退寺の紅葉は例年11月下旬から12月上旬が見頃だそうなので、季節が合いましたらぜひ業平ゆかりのお寺で紅葉をご覧ください!
ちなみに不退寺は「南都花の古寺」と呼ばれ、それぞれの季節では、れんぎょう、椿、かきつばた、萩、スイレン、美男葛(びなんかずら)が見られるそうです。
在原業平という人
冒頭でもお伝えした通り、不退寺は在原業平ゆかりの寺で、「業平寺(なりひらでら)」という別称もあるくらいです。
この在原業平という人、かなりのイケメンで風流人だったらしく、清和天皇の女御(妻)だった藤原高子(ふじわらのこうし)と駆け落ちしようとしたり、小野小町にラブレターを贈ったりと、残る伝説も風流な感じです…
不退寺では毎年3/1~5/31、10/1~11/30の年2回、在原業平の肖像画をご覧いただけます。
小指を立てた状態で筆を持つお姿で、「さすが在原業平。よっ、この風流人!」と思わず言いたくなるようなポージングをしています笑
その他、在原業平の命日である5/28には「業平忌」として法要が行われ、多宝塔が特別開扉されます。
時期が合いましたらぜひご覧くださいませ。
ぐるっと不退寺
Around Futaiji
見どころで取り上げたもの以外で、不退寺の境内で気になったものをご紹介します。

境内をゆっくり一回りした場合の所要時間は25分くらいです
南大門

不退寺の正門(拝観入口)です。鎌倉時代後期の1317年に建立され、重要文化財になっています。門の扉には鎌倉時代の部材や、明治時代の部材が混在しているそうです。
本堂

南門から真っすぐ進むとあります。鎌倉時代後期に建てられたそうです。こちらで、御本尊の『聖観音菩薩立像』や、『五大明王像』などをご覧いただけます。
業平格子

本堂にはこちらの写真のような菱形のデザインが施されています。こちらは「業平格子(なりひらごうし)」と呼ばれ、在原業平の衣にあしらわれていたデザインだそうです。
多宝塔

本堂に向かって右手の方に行くとあります。鎌倉時代中期に建てられたもので、境内で一番古い建物だそうです。元々二層だったそうですが、明治~大正時代に破損してしまったそうです。
庫裏

南大門から進み、左手にあります。明治18年(1885年)に品川弥二郎によって寄進された建物です。不退寺の寺務所で、特別拝観時以外はこちらで拝観受付が行われています。
石棺

庫裏の庭(奥)にあります。長さ2.7mある大きな石棺です。ウワナベ古墳の南東でみつかった平塚古墳から発掘されたものだそうです。鎌で研いだ痕が多数残されています。
飼い猫?

不退寺の飼い猫なのか、庫裏を出入りしています。人にあっても逃げるようなところはなく、人に慣れている感じです。
アクセスと拝観情報
Access & Information
不退寺へは最寄駅から徒歩で行くか、最寄りのバス停まで奈良交通バスを利用して行く方法があります。
最寄駅から徒歩で行く場合
不退寺の電車の最寄り駅は近鉄「新大宮」駅です。
新大宮駅の北口から北に向かって行くと不退寺に到着します。
徒歩だと約16分になります。
奈良駅からバスで行く場合
不退寺の最寄りのバス亭はJR/近鉄奈良駅からなら「一条高校前」、近鉄大和西大寺駅からなら「不退寺口」です。
バス停「一条高校前」「不退寺口」から北に向かってへ5分ほど歩くと南大門が見えます。
バスの乗車時間はJR奈良駅から約14分、近鉄奈良駅から約7分、大和西大寺から約11分になります。
⇒JR奈良駅から「一条高校前」への時刻表
⇒近鉄奈良駅から「一条高校前」への時刻表
⇒大和西大寺駅から「不退寺口」への時刻表
| 拝観時間 | 9:00~17:00 (受付は16:50頃まで) |
| 拝観料 | 【通常時】 大人:500円 中学生・高校生:300円 小学生:200円 【特別展時】 大人:600円 中学生・高校生:400円 小学生:300円 【業平忌】 大人:700円 中学生・高校生:500円 小学生:300円 ※団体割引あり |
| 所在地 | 奈良県奈良市法蓮町517 |
| TEL | 080-8943-1201 |
| ホームページ | http://www3.kcn.ne.jp/~futaiji/index.html |
| その他 | 無料駐車場有(8台分) |
ちょっとそこまで
Neighborhood
不退寺の周辺にある観光スポットやおすすめのスポットをご紹介します。

お時間があればぜひ一緒に行ってみてください
狭岡神社

不退寺の東にあり、徒歩7分ほどで行けます。「さおかじんじゃ」と読みます。伝承によると、藤原不比等が国家鎮護と藤原氏繁栄のため、自身の邸宅「佐保殿」の丘上に天神八座を祀ったのが始まりとされています。
ウワナベ・コナベ古墳

不退寺の北西にある2つの古墳で、ウワナベ古墳へは徒歩7分ほど、コナベ古墳へは徒歩15分ほどで行けます。5世紀の中頃に築造されたとみられる前方後円墳になっています。ウワナベ古墳(上記写真奥)は奈良市内最大だそうです。
不退寺周辺地図

以上、不退寺についてでした!
こちらのページが拝観のご参考になりましたら幸いです^^



